ケースワークの発展

はじめに

ソーシャルワークを学ぶにあたって極めて重要なことがあります。

それはソーシャルワークの発展についてです。

実はソーシャルワークは、今でこそケースワーク、グループワーク、コミュニティワークなどを含みますが、これらはもともと個々の援助技術として発展していきました。

なのでソーシャルワークの発展を学ぶにあたって、それぞれ個々の援助技術をみるところから始まります。

今回はそのうちのケースワークについて取り上げていきたいと思います。

それでは確認していきましょう。

慈善組織協会

ケースワークの源流は1869年にイギリスで設置された慈善組織協会(COS)の活動にあります。

当時の時代からみていきますと

1800年代後半のイギリスは劣等処遇の原則というものが重要視されます。

それによって、非常に制限的な貧民救済しか行われず、多くの貧困者は国家からの援助が受けられない状況がありました。

このような背景から、イギリスでは慈善活動が取り組まれます。国がやらないなら民間でやるという姿勢で、1861年のロンドンでは640もの慈善団体があったそうです。

しかし慈善団体がそれぞれ独自で活動するゆえに問題が生じます。

複数の団体が同じ一人の貧民を援助することや、援助が必要であるにもかかわらず漏救が発生する問題があったのです。

そこで設立されたのが慈善組織協会です。

慈善組織協会は慈善団体間の連絡調整をする組織として設立されました。

それによって、慈善組織の団体は貧民救済に関する情報交換を行い、より効率的な慈善活動を行うことができたのです。

友愛訪問

慈善組織協会がケースワークの源流と言われる理由の一つとして友愛訪問があります。

協会は、慈善の効果をあげるために貧民の家庭を訪問し、調査し、友愛訪問員の道徳的な感化によって、貧民の立ち直りを期待したのです。

「施しよりも友人に」という原則があったとのことで、無原則に金銭を与えることはかえって貧民を堕落させると考え、貧民への個別的な接触による援助を行いました。

この個別援助を重視したところがケースワークの源流といわれる所以です。

しかしこの方法では限界があったとのことです。

リッチモンド

イギリスではじまったケースワークは、すぐさまアメリカに渡ります。

アメリカでも1877年にバッファローにて慈善組織協会が設立され、その後各地にも設立されます。

アメリカの慈善組織協会の特色として「友愛訪問員を有給で雇用する」、そして「訓練にも力を入れる」ところがあります。

特に1898年にはニューヨークの慈善組織協会で6週間もの夏期講習会が開催されたことは有名です。

そしてこのような時期に後に「ケースワークの母」と呼ばれるメアリー・リッチモンドが登場します。

リッチモンドは慈善組織協会の活動や、講演、援助活動に関する論文をまとめることを行っていました。

そして1917年に「社会診断(Social Diagnosis)」をまとめ、ケースワークを初めて体系化させたのです。

社会診断ーメアリー・リッチモンド

さらに1922年には「ソーシャルケースワークとは何か(What is Social Case Work?)」を出しました。

ソーシャルケースワークとは何か?-メアリー・リッチモンド

ソーシャルケースワークとは、人間とその社会環境との間を、個々に応じて、意識的に調整することによって、パーソナリティの発展を図ろうとするさまざまな過程からなるものである」は有名なケースワークの定義となったのです。

診断主義派と機能主義派の登場

その後ケースワークは第一次世界大戦や世界恐慌があり、心理学(特に精神分析)に傾きます。

また1916年にアメリカ病院ソーシャルワーカー協会、1919年に全国学校ソーシャルワーカー協会、1921年に全米ソーシャルワーカー協会、1926年に全米精神医学ソーシャルワーカー協会が設立されるように専門職志向が強くなっていきます。

フレックスナーが1915年に「ソーシャルワークはいまだ専門職でない」と報告したことは有名です。

そしてリッチモンドに始まったケースワークは精神分析の影響を受け「診断主義派」のケースワークと呼ばれます。

診断主義派は「過去から現在」を重要視し、ケースワークのプロセスを「調査→診断→処遇」というように考えたのです。

診断主義派の代表者として

1951年「ケースワークの理論と実際」を著したハミルトン

1964年「ケースワークー心理・社会療法」を著したホリスが有名です。ホリスは人とその人を取り巻く状況とその両者の相互作用の視点から「状況の中の人」という概念を提唱しました。

一方で診断主義派と別の動きもありました。

1930年代の機能主義ケースワークです。

ランクの意思心理学を基盤とし、クライエントは自己の中に成長する力を備えており、ケースワークとはクライエントがその力を発揮できるような場面を構成することにあると考えました。

そして診断主義派と機能主義派の2つが対立し発展していくのです。

機能主義派の代表者としては

1946年「家族ケースワークとしてのカウンセリングと保護的サービスー機能主義アプローチ」を著したタフト

1967年に「ソーシャルワーク実践のための理論」を著したスモーリーが有名です。

このように診断主義派と機能主義派が存在しながらそれぞれ発展していったのです。

診断主義派と機能主義派の統合

第二次世界大戦後のケースワークは診断主義派と機能主義派の対立と発展という形で展開されます。

しかし一方で両派を統合しようとする動きもありました。

機能主義派ではアブテカー

診断主義派ではパールマン

それぞれの立場から両者を統合しようとしたのです。

アブテカーは1955年「ケースワークとカウンセリングの力動性」を著しました。

パールマンは1957年「ソーシャルケースワークー問題解決の過程」を著しました。

パールマンは「4つのP(Person、Problem、Place、Process)」「問題解決モデル」で有名です。

また「ソーシャルケースワークは人々が社会的に機能する間におこる問題をより効果的に解決することを助けるために福祉機関によって用いられるある過程である」と定義しました。

ちなみにパールマンの問題解決アプローチは「クライエントの問題解決能力」を重視しています。

そこでは「ワーカビリティ(クライエントの持つ能力で、援助を自分に取り入れること)」が重要となっております。

またパールマンは「ケースワークは死んだ」という象徴的な言葉があるように

ケースワークは、「援助技術の基盤を精神分析以外に求めること」、「個別援助のみならず、グループワークやコミュニティオーガニゼーションとの統合」という道をたどるようになります。

そして、1970年代にはさまざまな心理学や社会学を取り入れ、多様なモデルが作り出されます。

「心理社会的アプローチ(診断主義派)」や「機能主義アプローチ」、「問題解決アプローチ」や「課題中心アプローチ」、「危機介入アプローチ」や「家族療法」、「行動修正」などさまざまなアプローチが取り入れられ、ケースワークが多様化されていったのです。

まとめ

いかがだったでしょうか。

キーワードを再度確認すると

・慈善組織協会(COS)、友愛訪問

・イギリスに始まってすぐさまアメリカに渡る

・友愛訪問員の有給化、訓練(夏期講習)

・専門職志向

・診断主義派と機能主義派

・ケースワークの多様化

このような流れで進んでいきます。ソーシャルワークは掘り下げていくことで深みと面白みが増していくものだと感じます。

特に個人的に感じたものとしては、診断主義派と機能主義派の対立と発展そして両者を統合とした考え方の出現は、遺伝説と環境説、そしてその折衷論である輻輳説と比較してみると面白いと思いました。

リッチモンドがすでにこの時点で個人だけでなく環境にも焦点を置いた考え方をしたこと

専門職志向に目が向いてから約100年経って今もなお専門職について議論されていること

心理学と社会学を基盤として発展していったものであること、などなど

ソーシャルワークというものはとても深いものであり、今後とも学びを続けていきたいという気持ちが湧いてきます。

以上ケースワークの発展についてでした。次回もよろしくお願いします。

参考文献:新社会福祉方法原論 硯川眞旬 第12章 ソーシャルワークの生成と発展

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