提供者:Pedro Figueras

近年の日本はストレス社会と言われ続けております。

誰しもが日常生活において何かしらのストレスを抱えていることと思われます。

ストレスを抱えていると健康に悪影響を与えることはよく知られております。

特にストレスは免疫力を下げ、病気のリスクを上げます。

そこで今一度ストレスについて心理学の観点から学んでいきたいと思います。

それでは確認していきましょう。

ストレスと健康について

ストレスの定義

私たちの周りにはたくさんのストレスがあります。

例えば、人間関係、思いもよらぬトラブル、育児家事等のシャドーワーク、仕事関係、病気、環境の変化など様々です。

このようにたくさんのストレスが私たちを取り囲んでいます。

このストレスという用語はセリエ博士がはじめて心理学で紹介されたようです。

またバウムはストレスを以下のように定義しております。

ストレス定義

ストレスを喚起するような出来事を変化させようとして、あるいは出来事がもたらす影響に適応しようとすることによって、生化学的、身体的、認知的、行動的変化が生じると予測することに伴う不快な感情的経験である。

このようにストレスは「ストレスを喚起する出来事によって生じた変化への適応反応」と言われております。ストレスを発見すると、心身ともに人間の内部で様々な変化が起きるのです。

またストレスに反応する際に汎適応症候群(general adaptation syndrome)というプロセスを通るとのことです。

◇汎適応症候群

①警告反応(alarm)

・脅威の存在を発見

・心理的覚醒状態

・脅威を受け流すため身体は資源を動員

②抵抗(resistance)

・覚醒状態が長く続く

・脅威を何とかして追い出そうとする

・失敗すると疲憊期へ

③疲憊※読み:ひはい(exhaustion)

・なおストレスが続くと消耗状態になる

・資源を過度に使用し、病気発症のリスク増

このように①→②→③のプロセスを通るとのことです。

ストレスと病気

ストレスと病気の関係について

ストレスは健康を損なわせる可能性があります。

これまで様々な研究者たちがストレスと健康について研究されてきました。

例:ストレスと健康についての関係

・免疫システム低下(バートロップ)

・病気の発症率を上げる(コーウェン)

・癌細胞の増殖を促進する(ヴィシンテイナー、スカラーとアニスマン)

このように高いストレスを抱えることは健康に悪影響を与えるのです。

またバウムによると「ストレスが健康に与えるプロセス」とは

①直接的身体効果

・血圧の上昇

・免疫の低下

・ホルモン活動の増加

・脂質代謝の促進

②健康習慣効果

・タバコやアルコール摂取増加

・栄養物摂取低下

・睡眠時間の低下

・ドラッグ使用の増加

③健康行動効果

・服薬の怠り

・受診が遅くなる

・診断結果の誤魔化し

・治療を受けたがらない

ストレスの影響を受け、①~③が相互に関連し合って、結果健康悪化となるとのことです。

敵意と病気の関係

フリードマンとローゼマンは、心臓疾患に影響を与えるリスク要因を調べた結果、ある特徴を備えた人は心臓発作に見舞われることが多いと発見しました。

タイプA行動パターンと言われます。

しかし、この概念は見直され、行動パターンよりも「敵意(hostility)」を持つ人は、常にストレスと隣り合って生活しているが故、心臓疾患に侵されやすいとされております。

敵意

①円滑な血流を妨げる

②自分の健康に関心が薄い

③ネガティブな経験に対し、激しい心臓血管反応を示す

このように敵意やストレスを抱えることは心や身体によくない影響を与え、結果病気のリスクが高くなるのです。

ストレス・コーピングについて

ストレス・コーピング

ストレスは誰しもが経験するものです。

そこでラザルスとフォルクマンストレスコーピング理論を提唱しました。

ストレスコーピング理論

自身の置かれた状況を判断し、ストレスを緩和するために採るべき対処方略を選択する過程

この過程とは

①ストレス源

・潜在的にストレスを引き起こす出来事

②アブレイザル

・出来事と自分の能力についての評価

③コーピング

・ストレスを軽減するための継続的な過程

このように①→②→③の過程を経て、私たちはストレスに向き合うのです。

コーピングに関する書籍は多く出版されておりますね。

ヨガや呼吸法、音楽やちょっとした運動、ワークなど様々なものが活用できます。

数年前に「キラーストレス」が話題になりました。ご覧になった方も多いと思います。

そこから次第にコーピングやマインドフルネスが世間でもよく耳にするようになったと感じます。

ストレス源

私たちの周りには様々なストレス源があります。

具体的にどのようなものが存在するか示したものが「社会的再適応評価尺度」です。

生活上の出来事 ストレス度 生活上の出来事 ストレス度
1 配偶者の死 100 23 子どもが家を離れる 29
2 離婚 73 24 親戚とのトラブル 29
3 別居 65 25 特別な業績 28
4 留置所の拘留 63 26 妻が仕事を始める、あるいは中止する 26
5 親密な家族の死亡 63 27 学校が始まる 26
6 自分の病気あるいは障害 53 28 生活上の変化 25
7 結婚 50 29 習慣を改める 24
8 失業 47 30 上司とのトラブル 23
9 夫婦の和解 45 31 仕事上の条件が変わる 20
10 退職 45 32 住居が変わること 20
11 家族の一員が健康を害する 44 33 学校が変わること 20
12 妊娠 40 34 レクリエーションの変化 19
13 性の問題 39 35 教会活動の変化 19
14 家族に新しいメンバーが加わる 39 36 社会活動の変化 18
15 新しい仕事への再適応 39 37 1万ドル以下の抵当か借金 17
16 経済状態の変化 38 38 睡眠習慣の変化 16
17 親友の死亡 37 39 家族が団らんする回数の変化 15
18 異なった仕事への配置換え 36 40 食習慣の変化 15
19 配偶者との論争の回数の変化 35 41 体罰 13
20 1万ドル以上の抵当か借金 31 42 クリスマス 12
21 損保物件の受戻し権喪失 30 43 ちょっとした違反行為 11
22 仕事上の責任変化 29

参考:ストレス要因のランキングとは?労働者のストレス原因を知ろう!

この項目でもあるように「結婚」のような肯定的なものもストレスになります。

また引っ越しや新しい環境変化など、基本的に「変化」はストレスになります。

これらの点数が300点を超える人は翌年に何らかの身体疾患が現れるということで注意が必要になります。

今職場ではストレスチェック制度が導入されております。

ストレスチェック等の職場におけるメンタルヘルス対策・過重労働対策:厚生労働省

ストレスチェック制度は「労働安全衛生法」です。50人以上の労働者(パート等含む)がいる事業者に実施義務があります。

ストレスチェック制度は1次予防(未然防止)を目的とされております。

ストレス対策では早期発見早期対策をすることで慢性化を防ぐことにつながるのです。

カーヴァーのBrief COPE

コーピングにはカーヴァーのBrief COPEと呼ばれる14種類のコーピングからなる尺度があります。

①積極的コーピング

②計画

③肯定的再評価

④需要

⑤ユーモア

⑥宗教

⑦情緒的サポート

⑧道具的サポート活用

⑨気分転換

⑩否定

⑪発散

⑫薬物使用

⑬行動的離脱

⑭自己非難

それぞれの項目について「0:全くしなかった」から「3:とてもよくした」で回答します。

そしてコーピング方法ごとに合計得点を算出するとのことです。

問題焦点型と情動焦点型コーピング

カーヴァーは14種類を掲げましたが

ラザラスとフォルクマンは大きく2つに分類しました。

それが「問題焦点型コーピング」と「情動焦点型コーピング」になります。

問題焦点型コーピング

認知的かつ行動的な試みを用いてストレスを引き起こす問題の源泉に打ち勝とうとすること

このようにストレス源を避けるのではなく、積極的に正面から立ち向かおうとするのが問題焦点型コーピングになります。

先ほどのカーヴァーのBrief COPEで言えば、「積極的コーピング」と「計画」が当てはまります。

情動焦点型コーピング

ストレス源によって引き起こされた情動反応を和らげようとする試みのこと

情動焦点型コーピングには様々なものがあります。

先ほどのカーヴァーのBrief COPEで言えば、「情緒的サポート活用」「気分転換」「否定」などがそれに当てはまります。

私たちはストレスに対処する際に、この「問題焦点型コーピング」と「情動焦点型コーピング」の両方を用いているのです。

健康な生活を送るために

ソーシャルサポート

「人間は社会的動物である」

このように私たちは他者から与えられる援助「ソーシャルサポート」が必要です。

「ソーシャルサポート」は心理的にも身体的にも健康に良い効果をもたらすとのことです。

ソーシャルサポートの効果の例

・血圧を下げ、ストレスホルモンの分泌を減少、免疫反応を強める(ウチノら)

・ソーシャルサポートが多いほど長寿(バークマンとサイム)

このようにソーシャルサポートは健康にも良い効果をもたらします。

※ただ悪い人間関係や押し付けがましいサポートは逆にストレスを悪化させることもあります。

私たちの生活において、信頼する人が周りにいること(人数によらず)はとても重要で、心身ともに多大な効果をもたらしてくれるのです。

それこそ私たちは誰かの支えがあってこれまで生きることができたはずです。

また「人」という漢字は、「支え合い」を表しておりますよね。

「人は誰かに支えられてもいい存在」なのです。

私が社会福祉士の勉強をしているときに、たまたまテレビでやっていた大泉洋さんの奥尻島での成人式祝辞です。これが大切なのです。

ポジティブ心理学

ポジティブ心理学というものが話題になっております。

数年前セリグマンが日本に来日されました。

心理学はこれまで病気を治すことに焦点を置かれてきました。

これまでの概念を改め、心理学は実は幸福な人生を送るために活用することができるという点に着眼点を変化させたものがポジティブ心理学です。

個人的にポジティブ心理学は、これからますます重要になってくると思われます。

興味のある方は是非書籍等ご覧になってみてください。

ポジティブ心理学が1冊でわかる本~アマゾン

まとめ

いかがだったでしょうか。今回はストレスについてまとめてみました。

ストレスは誰しもが抱えるものです。当然ストレスを抱えたいという人はいないと思います。

ストレスを未然に防止することや、ストレスが軽減される行動を日々の習慣に取り入れることなどは自分や周囲を大切にするためにも重要です。

皆さんも「自分を大切に、周囲を大切に」です。

まず「自分から」始めましょう。それでいいのです。

福祉の現場でも「こちらに余裕がある」ことが大切と先日ある方が教えてくれました。実際その通りであると感じました。直感でヴァルネラブルモデルというものを彷彿させられました。

もともと潜在化したものが顕在化したという見方もできますが、日本は世界的にみてもストレス社会と言われております。

みなさんも自分を大切に、そして周囲を大切にしましょう。

参考文献:社会心理学 藤原武弘 編著 晃洋書房 第14章健康行動

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