提供者:Alina Vilchenko

人間は社会的動物である

社会福祉士の国家試験でも「心理学理論と心理学支援」、「社会理論と社会システム」という科目が現行カリキュラムで存在しております。

ただ社会理論は難しい用語も多く、膨大な範囲をまんべんなく勉強する社会福祉士の国家試験では重点的に勉強する余裕はなかったかと思います。

しかし、我々はあらゆる分野から知識や情報を引っ張り出し、アレンジして展開するジェネラリストです。

そのため国家試験合格した後には、さらなる学びの一つとして心理学や社会学を学んでみてはいかがでしょうか。

個人に焦点を当てるということは、個人を取り巻く環境や社会にも焦点を当てる必要があります。

心理学は「人から社会をみる」のに対し、社会学は「社会から人をみる」と言えます。そのため我々は心理学と社会学を両方の立場から押さえることが重要なのです。

専門家のように学問を深く知るまでにはいかなくとも、ざっくりと広く押さえていくことで新しい発想も生まれてくるかもしれません。

今回は社会学の成り立ちということで、簡単に要点だけみていきたいと考えております。

アメリカの社会学者であるアルビオン・W・スモールは「社会学は社会の改良という近代の熱い想いから生まれた」と言っております。

それでは一緒に確認していきましょう。

社会学の成り立ち

イブン・ハルドゥーン

・時代:1377年頃

・著書:歴史序説

・概要:アサビヤー(連帯、結びつき)の概念を提唱

14世紀のアラブの思想家であるイブン・ハルドゥーンは、「世の中にはなぜ栄える国と征服される国があるのか」という問いを巡り、壮大な歴史書を書かれたとのことで、「歴史序説」は社会学の先駆的な著書として位置付けられております。

その中で栄える社会の成功は「アサビヤー」だと考えており、一方で「アサビヤー」というものは社会が大きくなり年輪を重ねるにつれて薄まり、文明は弱体化すると言っております。

現代を振り返ると、これだけ世の中がグローバルに大きくなっている中で、人々の関係が薄れていっていることもまた一つの大きな課題となっております。

その他この「連帯」というテーマに関しては、「アレクシス・ド・トクヴィル」、「フェルディナント・テンニース」、「ロバート・パットナム」、「ミシェル・マフェゾリ」が関係しております。特に「ロバート・パットナム」は「社会関係資本(ソーシャルキャピタル)」を提唱したことで地域福祉では特に重要となっております。

アダム・ファーガソン

・時代:1767年頃

・著書:市民社会史論

・概要:資本主義の悪影響と戦うには市民精神が必要

’資本主義に内在する利己主義が伝統的な社会の絆を脅かすと警報を鳴らした’

・アダム・ファーガソンはスコットランド啓蒙思想派の有力メンバーだったとのことです。商業主義の発展に伴って、伝統的な協力の精神や仲間意識がすたれていくことに危機感を感じておりました。そこで資本主義が社会の崩壊を招くということで、市民精神を提唱しました。ファーガソンの思想は後のヘーゲルやマルクスに影響を与えたとのことです。

昔の社会は家族や地域社会に根ざしていた」ということで、地域社会に関しては、もっと昔の時代から多くの人が考えを巡らされていたようです。

アンリ・ド・サン=シモン

・時代:1813年頃

・著書:人間科学に関する覚書

・概要:社会の科学という概念を提唱

・時代はフランス革命です。サン=シモンは、革命後の混乱の中で、いかにして社会秩序を確立できるかを探りました。サン=シモンの弟子にはオーギュスト・コントがいます。オーギュスト・コントは、サン=シモンから社会を科学的に研究する姿勢に大きく影響を受けたとのことです。

オーギュスト・コント

・時代:1830年頃

・著書:実証哲学講義

・概要:科学としての社会学がいかに形成されたかを論ずる

・’’近代社会は「理性の時代」ということで、合理的な思考と科学的な思考を基礎としていた’’とのことで、理論を支えるためにはエビデンスが重要と考えていました。また社会学の応用は社会の改良に役立つと確信していたとのことです。

また彼の理論に関しては批判する者も多かったようですが、イギリスのジョン・スチュアート・ミルは金銭的な支援をし執筆活動を支えることや、ハリエット・マルティノーは「実証哲学講義」の抄訳版を英語で刊行するなどしてコントを支えたとのことです。

〇3段階の法則

①神学的段階

~ すべては神の采配で決まると考えられていた時代。啓蒙の時代まではフランスは神学的段階にあり、協会の規則によって社会秩序が決まっていたとのことです。18世紀の啓蒙の時代まで続きました。

②形而(ケイジ)上学的段階

~ 神ではなく人間の理性的思考で世界を解釈する時代。フランス革命を経て、形而上学的段階へ突入しました。自由や平等の権利によって秩序が形成されるようになりましたが、革命後の社会は欠陥だらけで、コントはいち早く次の段階に移る必要があると考えていたようです。

③科学的段階

~ コントは社会学を自然科学の諸分野の上に位置付ける必要があると考えていました。そのため、これら諸学とその方法論をしっかり学び、科学手法を社会学に応用することに努めました。コントは観察にもとづく検証を大切にし、エビデンス(証拠)の重要性を唱えておりました。

〇社会学を大きく2つの分野に分ける

①社会静学

~ 社会秩序を決定し、社会を安定させる力を研究対象とする

②社会動学

~ 社会の変化を導く力を研究対象とする

サン=シモンから強い影響を受けたコントは、このように科学的な手法を用いて新たな時代を社会学の分野で切り開いたのです。

ハリエット・マルティノー

・時代:1837年頃

・著書:アメリカ社会の理論と実践

・概要:奴隷や女性、労働者階級に対する差別と社会的不平等を告発

・アメリカの独立宣言では、権利の平等という原則が出されましたが、実はその権利は男性のみの権利だったとのことです。そのため女性は2級市民の扱いでした。マルティーノはジャーナリストとして多くの記事を執筆し、奴隷制の廃止と女性解放に生涯を捧げたのです。「人類の半分は女性である」と市民社会のあるべき姿を追求し続けました。

カール・マルクス

・時代:1848年頃

・著書:共産党宣言、資本論(1867年頃)

・概要:フリードリッヒ・エンゲルスと共に、プロレタリア革命による社会変革の必然性を論ずる。また資本論は社会主義の包括的分析として出された。

〇資本主義の階級について

①ブルジョア階級

~ 産業を所有する階級。生産手段を握ることで豊かになる一方で、自己利益を追求するがゆえに連帯が生まれず、たえまない競争により経済危機が繰り返し訪れるとのことです。

②プロレタリア階級

~ 労働者階級。自らの労働力をブルジョアに安く売るが、搾取ゆえに貧しいとのこと。プロレタリアは多数派であり、持たざる者であり、疎外される立場にあったが、集団として集団的利益を追求するとのことです。

〇歴史を5つの段階に分ける

①人類史の初期

~ 階級なき社会

②古代社会

~ 奴隷と社会的エリート

③封建時代

~ 小作農と貴族階級

④資本主義

~ プロレタリア階級とブルジョア階級

⑤歴史の終焉

~ 階級なき社会

資本主義を単純に2つに分けることには異論を唱える者もいました。エミール・デュルケームは工業化に問題があるとし、マックス・ウェーバーは文化的、宗教的な要因も関与していると論じました。

その後マルクスの影響は薄れていくのですが、後のフランクフルト学派(ユルゼン・ハーバーマス、エーリッヒ・フロム、ヘルベルト・マルクーゼなど)はマルクスの思想を受け継いだとのことです。

ハーバート・スペンサー

・時代:1874年頃

・著書:総合哲学大系

・概要:社会有機体説を提唱。人間社会も適者生存であることを主張

・「有機的」の反対は「機械的」です。有機的は「変化していく」ということで、個人も社会も制度も時代と共に変化する有機的なものと考えられております。

スペンサーは社会も生物同様に単純な形から複雑なシステムへと進化すると考えました。その中で最も強力な社会だけが生き残り繁栄する「社会ダーウィン主義」を提唱しました。

フェルディナント・テンニース

・時代:1887年頃

・著書:ゲマインシャフトとゲゼルシャフト

・概要:伝統的共同体と近代社会の差異などを論ずる

〇ゲマインシャフトとゲゼルシャフト

①ゲマインシャフト(共同社会)

~ 本質的意思が導くのは強調した行動であり、ゲマインシャフトに特徴的にみられる。

②ゲゼルシャフト(近代社会)

~ 選択意志が導くのは特定の目標達成にための行動であり、ゲゼルシャフトに特徴的にみられる。

テンニースは人を行動へ駆り立てる意思に着目しました。意思には自然で直感的な「本質的意思」理性的合理的な「選択意思」の2つがあると考えました。

「本質的意思」は習慣や風習や道徳概念に基づくものとし、「選択意志」は合理的な判断に基づくもので企業などを動かす原動力として資本主義社会の特徴として挙げました。

また、このゲマインシャフトゲゼルシャフトは対照的であっても大なり小なりと共存してきたとのことです。それが近代社会の産業社会ではゲゼルシャフトが圧倒していると説明しました。

エミール・デュルケーム

・時代:1893年頃

・著書等:社会分業論、社会学的方法の規準

・概要:社会分業論では有機体連携によって人は相互に依存していることを説き、その後ボルドー大学で欧州初の社会学部を創設。

・デュルケームは工業化に着目しました。伝統的社会では宗教や文化が集合意識を築き連帯を生み出していたが、近代社会では分業によって個々人の専門家が進み、そこでの連帯は特定の機能を分担する諸個人の相互依存から生じるとのことです。

かつては自給自足のもと諸個人がほぼ同じ仕事をしていたことに対し、近代化によって相互依存型へと移ります。すなわち、農民は鍛冶職人に馬に蹄鉄を打つために頼り、鍛冶職人は食料を得るために農民を頼ります。

このように工業化の進展により分業化が進み、個々の要素が器官となって全体を支えていると考えました。機械的連帯から有機的連帯の進化について述べ、その中では特に「動的密度」に注目しました。動的密度が上がると、資源への競争が激化する一方、そこで暮らす人々の間では社会的相互作用が活発になり、分業が発達するとのことです。

またデュルケームは工業化に伴う分業の進展が社会問題をもたらすことにも気づいておりました。機械的連帯のもとでは道徳的指針が存在していましたが、それらが失われ、集合的基準や価値観の喪失、人々のモラルの低下が起きてしまう状態を「アノミー」と呼びました。そして「アノミー」と「自殺」の関係について考察していく中で、「社会的連帯」こそ健全な社会の鍵であると確信されたようです。

マックス・ウェーバー

・時代:1904年頃

・著書:プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神

・概要:近代社会の発展について新たな解釈を示す(科学的な法則よりも、もっと主観的な解釈的アプローチを提唱)

・近代的な工業社会では、科学技術と経済が発展したが、そのための合理化と官僚機構の形成が伴い、新たな統制が生まれ、個人の自由が制限され、地域社会や血縁の絆が薄れたと考え、「官僚的効率性は伝統的な人間関係をつぶし、人を合理性という名の檻に閉じ込めた」と強い言葉を残しました。

また官僚主義というものは縦割りの階層構造をもたらすということで、さらに厳格な社会は個人の自由を制約し、人間性を否定すると言っております。その中で人々の社会的行為にも影響を及ぼし、家族や共同体の絆、伝統的な価値観や信仰は置き去りにされるとのことです。

一方でウェーバーは官僚制の打破な困難であるが、社会が生み出したものゆえに、社会によって変えることもできると考えていました。「将来においてもこの檻に暮らす人がいるのか、あるいは昔の観念や理想が復活するのか、答えは誰も知らない」という言葉を残した中で、現代はウェーバーからみたらどのようにみえるのでしょうか。

チャールズ・ライト・ミルズ

・時代:1946年頃

・著書:マックス・ウェーバー、社会学的想像力

・概要:マックス・ウェーバーの思想を英語圏に紹介し、その後パワーエリートが庶民の生活に及ぼす影響を改善する方法の提案こそ社会学者の役目であると論ずる

・チャールズ・ライト・ミルズは逮捕されるリスクを承知で、刺激的な著作活動を続け、アメリカ社会を牛耳るパワーエリートたちを批判したとのことです。

彼は「社会学的想像力」について述べ、個人のトラブルも公共の問題として捉える必要があるが、個人には自分の問題を社会の問題と結びつける術がないという状況で、この社会学的想像力があれば、個人の暮らしを変えることができると考えました。

そして自らの知識を用いて個人と社会の結びつきを客観的に解明することが、社会科学を学ぶものの道徳的義務であると述べました。

またミルズは、アカデミックな学者たちは日々の出来事に疎く、社会変革に関わるよりも壮大な理論の構築に腐心するばかりであると批判しました。知識はみんなの役に立つべきであり、率先して行動するのは社会学者の義務であると述べました。当然こうした批判は学会から敵意を向けられてミルズは孤立していきました。しかし今の世の中を見渡すと、彼の思想は時代の先をみていたと言えるのかもしれません。

ハロルド・ガーフィンケル

・時代:1967年頃

・著書:エスノメソドロジー

・概要:社会秩序を構成する日常的行動の観察として、社会学の新しい方法論を提示。人々の日常的行動の観察から社会秩序を検証すべきとした。

・ガーフィンケルはアメリカの社会学者タルコット・パーソンズの影響を受けた人でした。パーソンズからは社会学の一般理論構築という壮大な夢を追わず、社会の変化よりも社会秩序のルーツを探るよう教えを受けておりました。そのため、科学的な人間観察の方法論に焦点を向けたのです。

社会構造は一般的ルールのトップダウンで決まるものではなく、日々の小さな交流や相互作用の積み重ねであるボトムアップによってルールが作られていると考えました。そして社会組織や制度よりも、まずは日常的でミクロな人々の交流や相互作用に目を向けたのです。

エスノメソドロジーは、「社会秩序を支える諸ルールは、さまざまな状況に対応して人がどう振る舞うかの積み重ねで作られるのであり、そうした日常の相互作用の観測によってこそ社会秩序のメカニズムを解明できる」と考えたものです。

〇違背実験

~ 「規範は破ってこそ分かる」ということでガーフィンケルは違背実験というものを好みました。自分の両親に対して「ミスター○○」などと呼びかけ、また下宿人のように振る舞うといった規範破りの行為を行います。それによって、相手はたいてい動揺や怒りといった反応がでてきて、無自覚だった規範があぶり出されるといったものでした。

ミシェル・フーコー

・時代:1975年頃

・著書:監獄の誕生

・概要:社会における権力の本質に迫った。

・1960年代までの権力論は、政府や国が国民に行使する権力や、資本家と労働者という階級間の権力闘争に関するマルクス主義的なもの(マクロ的)で、ミクロで低いレベルでの力関係については焦点が置かれない(あるいはマクロな権力行使の結果とみなす)状況だったとのことです。

そこでフーコーは、権力はあらゆるレベルに発現していると考え、モノではなく関係であるとみなしました。その人と、その雇用主、子ども、所属する組織などの間にも力関係が成立されております。その中で、フーコーは力関係の本質が中世から今日までにいかに変化してきたかについて論じたようです。

またフーコーは、社会の規範は強制力によって課されるのではなく、むしろ牧師的な力の行使によって生み出されると考えました。国や政府が人々の特定の振る舞いを強制(あるいは禁止)するのではなく、社会の構成員がさまざまなレベルで力関係の複雑なシステムに参加し、お互いの行動を規制し合うのだそうです。

〇パノプティコン

~ ベンサムの考案した監獄のプラン。もはや究極の装置であるとのことです。1つの監視所ですべての囚人の行動を24時間監視できるすぐれた刑務所で、囚人は隠れようもなく、常に監視されている恐怖に囚われ、自発的に規律を守るようになるようです。もはや服従の強制は必要なく、人々が率先して規律を守るようになるメカニズムを確立すればよいということです。この考え方は刑務所だけでなく上下の階層構造を持つ組織(病院、学校、工場など)はすべて似たような方向に進化してきたとフーコーは述べております。

ジュディス・バトラー

・時代:1990年頃

・著書:ジェンダー・トラブル

・概要:ジェンダーとセクシュアリティに関する伝統的な解釈に異議を唱える。

・バトラーは「ジェンダーはいわばオリジナルのない模倣である」と述べました。人は自分の属する文化の期待に添うように振る舞い、その期待はその文化に属する大半の人たちの振る舞いから醸成されるとのことです。すなわちジェンダーというものは、「どう振る舞うか」で決まるという考えを示しました。

〇ジェンダーアイデンティティ

~ 人に本来備わっている何かではなく、行為や振る舞いの産物と考えていました。それゆえ、特定の行為を繰り返して演じ、社会の定めたタブーを受け入れるうちに、社会公認の性的アイデンティティが構築されていくことを訴えました。

そしてそれらを覆すためには、攪乱(逆らった演技)が一番効果的であるとし、わざと異性の服装をするなどジェンダーの演技性を有効に活用することで社会規範に挑戦できると考えたようです。

まとめ

いかがだったでしょうか。

このように社会学というものはあらゆる学問の上に立つという考え方もあるように難しい学問でもあります。ただ、新しい理論を生み出すのではなく、既にある理論を照らし合わせてみて発想することはできると思います。

今日本では地縁や血縁、地域社会とのつながりがキーワードになっております。

ただ社会学の成り立ち(これらは西洋中心ではありますが)をみると、もっと昔からつながりが弱体化していくことについては危惧され続けておりました。

また社会学は今ある多くの理論につながっているはずと考えます。それこそ、小説作家や、組織論、マーケティング、政治などあらゆる分野で必要な視点であります。

きっと社会学を学ぶということは、自身の見分を広げるにとどまらず、大きな力となって導いてくれると信じております。

心理学と社会学に強いソーシャルワーカー」を目指し、今後も学んでいきたいと思います。

ここまで読んでいただきありがとうございました。

次回もまたよろしくお願いいたします。

・参考文献

~ 社会学大図鑑 クリストファー・ソープ他 三省堂 「社会学の成り立ち」

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