テーマ「論語から学ぶ」

~前置きとして

〇自己覚知

自己覚知」という言葉があります。

個人的にも専門職的にも「自己覚知」というものを大切にしたいと日々心掛けております。

これはプロ野球選手で例えると、「なぜ打てたのか?」もしくは「なぜ打てなかったのか?」を絶えず吟味することでもあります。

当然、その背景にはスキルやコンディション、日々の生活、バットの選択、メンタル、対戦相手のデータなどあらゆる側面がありますよね。

時間とともに社会は変化し、人々も変化し、制度も変化し、自分自身も変化します。

特に対人援助職において、この「自己覚知」というものは欠かすことはできません。

 

 

〇再評価する

経験を積むにつれて成長し、「自分はできる」といった自信を持てることは素晴らしいことです。それはきっと努力と苦労の賜物であると感じます。

一方で世の中のあらゆるものはバランスで成り立っております。

それゆえ何かを得るということは、もしかしたら何かを見失っているかもしれないという視点が重要です。

自然界では「慣性の法則」と呼ばれるものがあります。

人の心では「中庸」と呼ばれる教えもあります。

シーソーのようなバランスは見えないレベルで存在するのかもしれません。

仮に森を抜けて、見通しの良い道にたどり着くことができたとします。

きっとその道を進んでいけば山の頂上にたどり着くかもしれません。

しかし、その道は本当に正しい道なのかどうかは絶えず吟味する必要があります。

大丈夫と思っていたら、気づいたら隣の山を登っているかもしれないのです。

なので、時間が経ったら少し立ち止まって、自分の現在地を再確認して(自分を再評価して)、次なるステップを進むことが大切だと感じます。

 

 

〇論語から学ぶ

愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」という有名な言葉があります。

とりわけ自分ではなく、他者から学ぶ姿勢というものは重要なのです。

「無知の知」を自覚すること。これは非常に難しいものです。

かつて渋沢栄一も「論語と算盤」の中で、自分の行いは論語に沿っているかどうかを常に気にかけていたと言っております。

「7つの習慣」で有名なスティーブン・R・コヴィーも日本の渋沢栄一からも影響を受けたと言っております。

そういったことから辿ると、つまるところは「論語」にあるのではと最近感じるようになりました。

そこで今回より「論語と福祉」というテーマのもと、自分なりの自己覚知として論語をみていきたいと考えました。

 

前置きが長くなりましたが、

今日はまず第一弾として「学而第一」をいくつか取り上げてみます。

学問を志すものの心得とは?

今を生きるヒントの扉を一緒に紐解いていきましょう。

学而第一

その①

子曰く、

「学びて時に之を習ふ。亦説(よろこ)ばしからずや。

朋有り、遠方より来たる。亦楽しからずや。

人知らずして慍(うら)みず、亦君子ならずや。」と。

〇ポイント

・学ぶこと → じっくり見て真似ること

・友が遠くから訪ねてくる → 他人がこころを寄せてくれること

・人が自分のことをわかってくれなくても腹を立てない → 社会の仕打ちにとらわれないこと

 

〇論語から学ぶ

私は大学にて教育の勉強をしていたとき「教える」は「教えないこと」と学びました。

学ぶ側の主体性のことを言っていたのです。

師は何も教えてくれません。一流の職人になりたかったら師から技を盗むのです。

ゴッホやビネも偉大なる画家でさえ模写から始まりました。

その道のプロになりたかったら、その道のプロのもとへいって学ぶことが早いと言います。

今はオンラインで多くの人と接点を持つこともできるようになりましたね。

自分が尊敬する人に会いに行き学びましょう。

自分にとって「師」と呼べる人の存在は、その人を長く深く支えてくれます。

また社会の仕打ちにとらわれないこと、これも重要です。

理不尽なこと、誤解されること、社会で生きていれば嫌なことは山ほどあります。

しかし実は、人間は24時間のうち8割は自分のことを考えているのです。これに気づくことで世界が変わります。自分のこと、他者からみられる自分のこと、自分からみた他者のことを絶えず考えているのです。

そのため、相手を変えることは難しいこと(さらに複数であれば尚更)で、手っ取り早いのは自分の眼鏡のレンズを変えることです。

それは習得できる技術でもありますが、鍛錬も必要です。

それでもゴールは自分の眼鏡のレンズを変えることだと知っていれば、道は開けます。

自分が変わることで、周りを変えることができる、それに気づいた人がソーシャルワーカー」なのです。

その②

有子曰く、

其の人と為りや孝弟(こうてい)にして、上を犯すを好む者は鮮(すく)なし。

上を犯すことを好まずして、乱を作(おこ)すを好む者は、未だ之れ有らざるなり。

君子は本を務む。本立ちて道生ず。孝弟なる者は、其れ仁の本為るか。

〇ポイント

・親孝行で兄弟想いの人で、家庭で目上の者に逆らう人は少ないということ

・目上の者に逆らわない、親孝行で兄弟想いの人は、争いを起こさないということ

・こういった根源、始原、本質をみると、親孝行で兄弟想いな人は仁であるということ。

〇論語から学ぶ

親孝行で、兄弟想いなやさしさ溢れる人といった「孝弟」こそが、仁の始まりと言っております。

親を大切に、兄弟に優しく、そういう「内」を大切にする人は、社会でも人間関係をうまく構築することができるとのことです。

さらに言えば、年長者とうまく人間関係を構築するということは、世間でも人間関係をうまく構築することができることにつながります。

みなさんの「普段訪れる場所」ではきっと様々な人がいるかと思います。それらの人を「内」と捉えて、「近いものを大切にする」という姿勢が大切です。

「やさしさという基本」は仁の出発点とのことです。

人生百年時代。

他者にやさしくできるということは、ものごとを成就させるための基本という姿勢を大切にしましょう。とりわけ福祉の世界では、きっとやさしさが出発点になるのかもしれません。

その③

子曰く、巧言令色、鮮(すく)なし仁。

〇ポイント

・口がうまく愛想がよい → 仁であるものは少ない

〇論語から学ぶ

「自分がどう在りたいか」より、「他人からどう見られるか」を重視すると、体裁をとりつくろうとなってしまうとのことです。

「一度限りの人生」

ドグマに囚われることなく、他人の時間を生きないことの大切さをスティーブ・ジョブスは言っていました。

巧言令色とは、言葉をうまくかざって顔色をつくろうことですが、シンプルに言えば偽りは見えない領域で自分を疲れさせてしまうということも一つにあると感じます。それが結果、相手のことを思いやる余裕も削られてしまうのかもしれません。

対人援助において大切なことは「こちらに余裕があること」と教えていただきました。

時間との制約、ルールとの制約、心のゆとりのなさといったものは、対人援助において本来のパフォーマンスを損なう恐れもあります。

そのため、まず自分は心にスペースを持って人と接することマネジメントを担当する者は直接援助を行う方の心にスペースを空けることを意識してみてはいかがでしょうか。

その④

曾子曰く、

吾(われ)、日に三たび吾が身を省みる。

人の為に謀りて忠ならざるか、

朋友と交わりて信ならざるか、

習わざるを伝うるか。

〇ポイント

・毎日3つのことを反省する。

①人の相談にのっておきながら、いい加減なアドバイスをしていないだろうか

②友だちとのつきあいで、言葉と行動が違っていたことはないだろうか

③また十分に身についていないことを知ったかぶりをして教えてはいないだろうか

〇論語から学ぶ

反省することは無限にあるとすれば果てしないもので、あえて3つに限定したということも重要とのことです。

「ひとづきあいの基本」とは「相手に身になって考えるということ」です。

福祉でも「ニーズ」というものを大切にします。

主語を「自分が○○に△△をする」のではなく、「相手が○○に△△をする」といったように、相手の立場で物事をみる視点が重要です。

A = A(バーバー) → AでないものでないものはA ※バーとはAの上にバーの記号を置く数学で否定をあらわすものとして読み取っていただきたいです。

自分 = 自分(バーバー) → 自分というものは他者の他者ということです。

福祉では有名なバイスティックの7つの原則というものがあります。

あれも実はニーズが出発点なのです。

クライエントは一つのカテゴリーではなく、個人特有のものとして見てもらいたいというニーズを持っている、ゆえに「個別化の原則」なのです。

このように「他者からみた自分」というものを意識して、相手を想うことで、きっと巡り巡って周囲から信頼され、親しまれ、大事にされるかもしれません。

その⑤

子曰く、

千乗の国を導むるには、事を敬んで(つつしんで)信あり(まことあり)、

用を節して人を愛し、民を使うに時を以ってす。

〇ポイント

・とても大きな国をおさめる上での心得

・できもしないことはしない、できることはちゃんとやる(やるからには中途半端にしない)

・やるときは無駄なお金をかけない

・人を労役させるときには不満がでないようなタイミングをみはからう

〇論語から学ぶ

人の上に立つ者の心得として、人の下で使われるものの幸せを何よりも考えることの大切さを教えてくれます。

他の口語訳もみてみますと、

「”戦車千台を持つような大国を治めるためには次の3つが大切です。慎重に政策を選び、一度決めたことは実行にうつすこと。政治に関わる費用を少なくして国民に還元すること。国民を仕事にかりだすときには農作業の時期とずらすようにすること。”」マナペディアよりhttps://manapedia.jp/text/1858

これを解釈したものが先ほどのポイントになります。

また、この教えで気になる点は「人を愛し」「民を使う」といったように「人と民」を分けているところがあるとのことです。「人と民は一緒にはならない」ということなのか、「ある時は人で、ある時は民なのか」は解釈が難しいところです。

ただ一つ言えることは、私利私欲のために行動すればたちまち国は崩壊するということです。

それだけは忘れないでありたいものです。

◇本日のまとめ

ここまで読んでいただきありがとうございました。

いかがだったでしょうか。

このような形で論語から学んでいきたいと思います。

アルフォンス・デーケンによれば、人間は若いうちは「所有物」といったものを重視しますが、年齢を重ねると「内面」というものを重視すると言っております。

「道徳心」というものは、きっとその人の内面を豊かにして、間接的に他者へもよい働きかけをするかもしれません。

渋沢栄一が「仁義道徳と生産殖利は元来共にあるべきである」という言葉を残しております。

また最近よく優れた経営者をみていると、「人間力」というものが際立っているようにもみえます。

ウォーレン・バフェットも、人を採用する上で「エネルギー」「知識」「誠実さ」を大切にすると言っております。しかしいくらエネルギッシュで賢くあっても、不誠実な人は採用したいと思われないのであり、ゆえに「誠実さ」というものは何よりも一番に大切であるとのことです。

このように「人間力」というものはあらゆる分野のコアに近いものなのかもしれません。

話は少し戻りまして

福祉の世界にいると、シンプルに優しい人はみんなから望まれ好かれます。

これは一体突き詰めるとどこに辿り着くのか、論語という教材から探求してみようと思います。

「ゼロかイチしかない」

サイトを始めて、訪れる人がゼロの日が全くなくなりました。

みなさんがサイトを訪れ、支えていただいているおかげで、続けることができます。

この場を借りて改めて感謝します。

以上「論語と福祉」でした。次回もまたよろしくお願いいたします。

参考文献 ~ 物語として読む 全訳論語 山田史生著 株式会社トレンスビュー 学而第一P12~P20

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